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税金・制度 · 9分で読める

独身税はいくら?年収別に計算したら、子育て世帯でも素直に喜べなかった

独身税はいくら?年収別に計算したら、子育て世帯でも素直に喜べなかった

4月の給与明細はまだ届いていません。

届いたら見慣れない項目が1つ増えているはずです。「子ども・子育て支援金」。SNSでは「独身税」と呼ばれて盛大に炎上しています。

僕は共働きで子どもが1人。たぶん「得する側」です。

本当に得するのか。気になったので全部計算してみました。

「独身税」という名前が強すぎる

正式名称は「子ども・子育て支援金制度」。2024年6月に成立した法律がベースで、2026年4月から徴収が始まりました。実際に給与から引かれるのは5月分からです。

仕組みはシンプルで、毎月の医療保険料に上乗せして徴収します。会社員なら労使折半なので、天引きされるのは半額。残りは会社が負担します。

集めたお金は児童手当の拡充、高校無償化、給食費無償化などの財源になります。

ポイントは「全員から取る」こと。

独身の人、子どもがいない夫婦、子育てがとっくに終わった人、75歳以上のおじいちゃんおばあちゃんまで。独身かどうかは関係ないのに「独身税」と呼ばれているのは、「子どもがいない人にとっては払うだけで見返りがない」という構造のせいです。

まあ、気持ちはわかります。

年収別にいくら取られるのか

2026年度の支援金率は0.23%(協会けんぽの場合)。これが段階的に上がって、2028年度には約0.4%に達します。

年収2026年度(月額)2028年度・満額時(月額)
300万円約288円約500円
500万円約480円約825円
700万円約671円約1,150円
1,000万円約959円約1,650円

※会社員の場合。労使折半後の本人負担額

共働きだと夫婦それぞれの年収に対して個別に徴収されます。世帯合算ではなく個人単位で計算されます。意外とこれ、知られていません。

うちは夫婦ともに年収700万円台なので、2028年満額時で合計月約2,300円、年間で約2.8万円の負担になります。

この金額だけ見たら「まあ、そんなもんか」でした。

問題はここからです。

家計の計算をするデスク

もらえる側を計算する

取られる側だけ見ても意味がないので、給付もちゃんと計算します。

たしか2024年の秋だったと思いますが、児童手当が拡充されて、子育て世帯がもらえるお金が増えました。うちに関係するのは3つです。

1つ目。高校授業料の無償化で所得制限が撤廃されました。うちは世帯年収1,400万円なので、旧制度では高校就学支援金(公立で年約12万円、私立で年約45.7万円)の対象外でした。それが受け取れる対象になった。

世帯年収910万円以上の家庭は、これまで高校無償化の対象外でした。共働きで2人とも正社員だと、わりと簡単にこのラインを超えます。うちもそうです。旧制度で私立高校に通わせた場合、年間45.7万円×3年間を全額自腹。それがゼロになりました。共働き高年収世帯にとっては、実はこの所得制限撤廃が一番インパクトがあります。

2つ目。児童手当の高校生延長。旧制度は中学卒業で終わりだったのが、18歳年度末まで月1万円。3年間で36万円です。

3つ目。公立小学校の給食費が無償化されました。月5,200円が支給されます。うちの娘は4月から小3なので、小6までの4年間が対象になります。

一生払い続ける。ここが盲点だった

ここからが本題です。うちの家計で損益計算をします。

まず取られる側。支援金は医療保険に入っている限りずっと払います。子どもが大人になっても。自分が定年退職しても。75歳を超えても。

子育てが終わったら止まるのかと思っていたら、止まりません。

娘が大学を卒業するのがざっくり14年後。その頃にはもう支援金の恩恵は受けていません。でも払い続けます。僕が65歳で退職する頃、娘はたぶん30代。とっくに独立しているでしょう。それでも払います。75歳になっても。

これを知ったとき、ちょっとため息が出ました。子育て支援の財源なのに、子育てが終わってからのほうが長く払う計算です。

期間年間負担累計
〜65歳(約20年)約2.8万円約56万円
65歳〜75歳約1万円約10万円
75歳〜約0.4万円数万円
生涯合計約70〜100万円

次はもらえる側を見てみます。

制度金額
給食費無償化(小3〜小6の4年間)約25万円
児童手当の高校延長(3年間)約36万円
高校無償化の所得制限撤廃36〜137万円
合計97〜198万円

高校が公立なら合計97万円、私立なら198万円になります。

差し引くと、こうなります。

公立コースなら生涯負担とほぼトントン。私立コースなら約100万円のプラス。

…微妙です。

「得する側」のはずが、ぜんぜん圧勝じゃない。子ども1人だと、こんなもんでした。

子どもの人数で景色が一変する

ただ、これは子ども1人の場合です。

2人なら給付が倍になるので合計194〜396万円。負担は変わらず約100万円なので、差し引き100〜300万円の得になります。3人以上だと第3子の児童手当が月3万円に跳ね上がります(旧制度は1.5万円だったので倍増)。0歳から18歳まで18年間で648万円。これに給食費や高校無償化を足すと、子ども3人の家庭は合計1,000万円を超える給付を受けられます。負担は変わらず約100万円なので、差し引き900万円のプラスです。

子どもの数が多い家庭を手厚くする設計なのは間違いありません。

逆に、独身で年収500万円の人は生涯で約43万円払って、見返りゼロ。DINKs(共働き子なし)で世帯年収1,000万円なら約86万円の純負担。

ケース生涯負担給付増差引
うち(子1人・共働き)約100万円97〜198万円トントン〜+98万円
子2人約100万円194〜396万円+94〜+296万円
独身・年収500万約43万円0円-43万円
DINKs・世帯年収1,000万約86万円0円-86万円

独身やDINKsの人にとっては、この表の右2行がすべてです。何十年も払い続けて、もらえるものはゼロ。「将来の年金を支える世代を育てているんだから、社会全体で負担すべき」という建前は理解できます。でも自分が独身だったらどう思うか。たぶん怒ります。月数百円とはいえ、「お前のためじゃないけど払え」と言われている感覚は、金額以上に気持ちに来るんじゃないかと思います。

この表を作り終えたとき、胸のあたりがモヤっとしました。得してるはずなのに、スッキリしません。

「独身税」と呼ばれる所以がここにあります。

夕方の住宅街を歩く親子

「集めるより、免除してくれ」が本音

得する側にいるはずなのに、手放しでは喜べません。

このやり方が引っかかっています。全員から集めて再分配するより、子育て世帯の社会保険料や税金を免除するほうがシンプルじゃないかと。あるいは別の財源。高齢者の医療費負担割合を見直すとか、やれることはあるはずです。

少子化対策が必要なのは間違いありません。子育て世帯の負担が減る仕組みはあっていいと思っています。個人的には、子どもを作らないと損するくらいのインセンティブがあってもいい。

ただ、その財源が「独身の若者からも取る」だと、結婚や出産のハードルを上げるだけで矛盾しています。年収300万円の独身者に月288円を課して、その人が「よし、結婚しよう」と思うかといったら、逆でしょう。

ちなみに海外でも似た制度を導入した国はあります。ブルガリアは1968年から子なし税を課しましたが、約20年間続けた結果、合計特殊出生率は2.0から1.8に下がっています。ルーマニアでも同様の制度が導入されましたが結果は同じでした。「取る」仕組みでは人は動きません。「もらえる」仕組みでないと意味がない。それなら最初から子育て世帯を免除する方がストレートです。

じゃあ自分はどうするのか。正直、月2,300円に対してアクションを起こすほどの金額ではありません。払うものは払います。

ただ、この制度を調べて改めて思ったのは、子育て世帯への支援は「国に頼る」よりも「自分で備える」方が確実だということです。給食費無償化の月5,200円、児童手当の月1万円。ありがたいです。でもそれだけで教育費が足りるかといえば、全然足りません。うちは毎月の積立投資の中に、娘の教育費用の枠を別で確保しています。もらえたらラッキー。アテにはしない。結局そのスタンスが一番安全です。

もし「独身税だ」と友人に言われたら、「そうかもね」としか返せません。得してる側なのに。

この記事を書くために色々調べて気づきましたが、損得をちゃんと計算している人はほとんどいません。「独身税だ」と怒る側も「子育て世帯は得する」と言う側も、具体的な生涯収支を出している人が少ない。怒りも安心も、なんとなくの印象で語られています。

だからこそ、一回ちゃんと計算してみる価値はあります。自分がどっち側にいるのか。どのくらい得するのか、損するのか。数字を出してみると、感情だけで語っていた景色がちょっと変わります。

うちみたいに子ども1人の共働き世帯は、得か損かのちょうどボーダーライン上にいます。子ども2人以上なら間違いなくプラス。独身なら間違いなくマイナス。制度の恩恵を一番実感するのは子だくさんの家庭で、一番割を食うのは結婚したくてもできない若者です。なんとも皮肉な構造だと思います。

僕の場合は「微妙に得してる」でした。5月の給与明細で「子ども・子育て支援金」の項目を見つけたら、この記事の表を思い出してもらえたらうれしいです。

この数字を見て正直に感じたことは、Noteに書いています。

夕焼けの公園で遊ぶ子ども

※制度の詳細は2026年4月時点の情報に基づいています。今後の改正で負担額・給付内容が変わる可能性があります。

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