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投資実践 · 10分で読める

金価格が6倍になっても買わなかった。S&P500を選び続けた理由

金価格が6倍になっても買わなかった。S&P500を選び続けた理由

8年前、妻が「金の積立ってどうかな」と言い出したことがあります。会社の先輩がやっていたらしくて、ちょっと気になったみたいです。

当時の自分にとって、金は「値動きが少ない安全資産」というイメージでした。リターンを求めて投資を始めた自分には、リスクヘッジ目的の商品は対象外。株式みたいに成長するわけでもないし、配当が出るわけでもない。「うーん、まぁ……」と曖昧に返して、結局そのまま何もしませんでした。

8年後の今、金は1グラム3万円を突破しています。当時は5,000円くらいだったので、約6倍。妻に「あの話、覚えてる?」とは聞いていません。聞かなくても、お互いわかっているので。

金のインゴット

あの頃の金は、退屈な商品だった

2018年頃の金価格は1グラム5,000円前後。国際価格で1,300ドル/オンスくらいです。

株式市場はアメリカを中心に右肩上がりで、S&P500が年率10%超のリターンを叩き出していた時期。「インデックスに入れておけば増える」という空気が漂っていて、そんな中で「金の積立をしよう」という気持ちにはどうしてもなれませんでした。

金は何も生み出さない。企業が利益を上げて、その分配を受ける株式とは根本的に仕組みが違います。バフェットの言葉を借りれば「金はキャッシュフローを生まない。コレクターズアイテムだ」。当時の自分はまさにこの考えでした。

正直に言うと、8年経った今でもこの感覚はほぼ変わっていません。「金は価値の保存手段であって、価値を生み出す装置ではない」。インデックス投資家としてはこの一点が、どうしても引っかかり続けています。

3万円。一体何が起きたのか

2026年3月、金の国内小売価格は30,248円/gを記録しました。2020年の約7,000円から4倍以上。8年前の5,000円からなら6倍です。

なぜここまで上がったのか。要因をいくつも調べましたが、自分なりに整理すると3つに絞られます。

1つ目は、世界中の中央銀行が金を爆買いしていること。2022年以降、年間1,000トン超の購入が続いています。それ以前の倍以上のペース。特に中国、ポーランド、インドが大量に買い増しています。

2つ目は、脱ドル化の流れ。ロシアがドル建て資産を凍結された件で「ドルを持つリスク」が顕在化して以降、BRICS諸国を中心に「ドルの代わりに金を持とう」という動きが加速しています。外貨準備に占める金の割合を引き上げた中央銀行は上位20行のうち90%にのぼります。

3つ目は、通貨そのものの価値が下がっていること。各国がお金を刷り続けた結果、法定通貨の購買力が落ちている。レイ・ダリオが「ゴールドを持っていなければ、歴史も経済もわかっていない」と言い切っているのは、これが理由です。

要するに、金が上がったというより、お金の価値が下がった。

中国では「金豆」と呼ばれる1グラム程度の小さな金を若者が買い漁っていて、18〜24歳の金購入率が2016年の16%から2021年には59%まで跳ね上がったそうです。コストコが金のインゴットを販売して購入制限がかかるほど売れている。日本でも金の密輸摘発が2024年に493件(前年比2.3倍)。世界中で「現金より金」という空気が広がっているのは、間違いなさそうです。

近年の値上がりを見て「金って投資対象だったんだ」と認識を改めました。でも、それでも自分の中では「買おう」とはなりません。

金 vs インデックス。数字で比較してみた

気になったので、実際にリターンを比較してみました。

直近5年のリターンでは、金がS&P500を上回っています。2025年の金は年初来+61%という驚異的なパフォーマンスでした。中央銀行の購入と地政学リスクが重なった結果です。

ただし、30年超の長期で見ると景色が変わります。

指標金(USD建て)S&P500
年率リターン(30年超)約8.0%約10.3%
シャープレシオ低い高い
配当・分配金なしあり
株式との相関係数0.06

S&P500の年率リターンは約10.3%、金は約8.0%。シャープレシオ(リスクあたりのリターン効率)でもS&P500が明確に上回ります。そして金には配当がない。

ただ、面白い数字が1つあります。金と株式の相関係数が0.06しかないこと。ほぼ無相関です。つまり株が暴落しても金が一緒に落ちるとは限らない。ポートフォリオに5〜10%混ぜるとリスク・リターン効率が改善するというバックテスト結果もあります。

レイ・ダリオの「オールウェザー・ポートフォリオ」では金を7.5%配分。数字だけ見れば、理にかなっています。

ちなみに2024〜2025年に金がS&P500をアウトパフォームしたのは、中央銀行の構造的な買い増し、地政学リスク、ドル安という複合要因が重なった結果で、「金が急に優秀になった」わけではありません。この異常値がいつまで続くかは誰にもわかりません。30年のデータを見る限り、株式の複利の力は金を上回っています。

データを確認する手元

それでも、買わない

データを見ると「5%くらい入れてもいいかも」と思う自分がいます。

でも、買いません。

自分のポートフォリオはVTI(全米株式)が50%、FANG+が5%、NASDAQ100が10%、オルカンが8%、iDeCoが4%。残りが現金です。金はゼロ。もし入れるとしたら現金を削ると思います。でも、そこまでして組み替える気になれない。

理由は、たぶん感情的なものです。自分は株式という「仕組み」が好きなんだと思います。企業が何かを作って、サービスを提供して、利益を生み出して、その一部が株主に還元される。この循環に参加している感覚がある。

金にはそれがない。希少だから価値がある。みんなが価値があると思うから価値がある。限りあるものという意味では不動産に近いかもしれません。でも不動産は少なくとも住めるし、貸せば家賃が入る。金はただ、金庫の中で光っているだけです。

レイ・ダリオは「ゴールドを持っていなければ歴史も経済もわかっていない」と言います。たぶん、ダリオは正しい。でもバフェットも正しい。どちらの哲学を選ぶかの問題で、自分はバフェット側にいます。理屈じゃなくて、感覚として。

バフェットの「金はキャッシュフローを生まない」という言葉が、8年経った今でも自分の判断基準になっています。合理的に正しいかどうかは別として、気持ちが乗らないものに投資するのは、自分には向いていない。

保険にも見えないし、投資にも乗れない

もう1つ正直に言うと、今の価格で買う気になれません。

3万円/g。8年前の6倍。ここから買ったら高値掴みになるんじゃないか。JPモルガンは2026年末に5,055ドル/oz、ヤルデニ・リサーチは6,000ドルと予測しているけど、アナリストの予測は当たったり当たらなかったりです。

これは株式でも同じ心理が働くはずなのに、不思議と金のほうが「もう遅い」と感じます。たぶん、金に対して「安全資産=安定した値段」というイメージが8年間抜けていないんだと思います。3万円の金は、自分がイメージする「金」じゃない。

金の本来の役割は「暴落時の保険」のはずです。でも最近は株と一緒に動くこともあるし、債券との逆相関も崩れてきている気がする。世の中の仕組みがちょっとずつ変わってきて、昔ながらの「株が下がれば金が上がる」が通用しなくなっているんじゃないか。保険として信じきれない金を、投資商品として買う気にもなれない。ちょっと宙ぶらりんな感覚です。

もし金を買うなら、こうする

自分は買わないけど、もし買うならどうするか。調べてみたら、2025年以降は選択肢が格段に増えていました。

商品信託報酬NISA成長投資枠備考
425A グローバルXゴールドETF0.1775%対応2025年9月上場。最安水準
447A SSスパイダーゴールドETF0.177%対応2025年11月上場
SBI iシェアーズ・ゴールドF0.1838%対応投信。100円から積立可。純資産3,661億円
1540 純金上場信託0.44%対応1kg以上で現物転換可能

2025年に低コスト金ETFが相次いで東証に上場して、信託報酬は0.177%まで下がっています。従来の純金上場信託(1540)の0.44%と比べると半額以下。NISAの成長投資枠で買えば売却益は非課税です。

ちなみにつみたて投資枠では金に投資する商品は対象外。現物の金地金を5年以内に売ると総合課税(最大55%)がかかるので、税制面でもETF/投信のほうが有利です。

SBI・iシェアーズ・ゴールドファンドは純資産が3,661億円に急成長していて、わずか9営業日で500億円流入した時期もあったそうです。楽天証券の調査では個人投資家の75.5%が「2026年の金相場は上昇する」と回答しています。それだけ金に関心が集まっているということ。

現物の金地金を買う場合は税金に注意が必要です。5年以内に売ると譲渡益が全額総合課税(最大55%)。5年超なら半額課税ですが、それでもNISA口座の非課税には敵いません。200万円超の売却では買取業者が税務署に支払調書を出す義務もあります。自分は買わないけど、買うならNISA成長枠でETFか投信が一番効率がいいと思います。

静かな朝の風景

10年後、金が10万円でも

正直に言えば、10年後に金が10万円/gになっていたらめちゃくちゃ揺らぐと思います。

でも、将来は誰にもわかりません。金が半額に落ちているかもしれないし、S&P500が3倍になっているかもしれない。金にしろ、インデックスにしろ、現金にしろ。将来が確実にわかるなら全員やっています。

8年前に妻が金を検討していたとき、もし毎月1万円でも積み立てていたら、たぶんすごい金額になっていたでしょう。でも、その代わりにインデックスを積み立てた。そっちもちゃんと増えている。何もしなかった世界線より、ずっとマシです。妻に「金、6倍だって」と言ったら「やっても良かったねー」と返ってきました。でもそれだけ。引きずっている様子はなかった。結果論だと、お互いわかっている。あの判断が間違いだったかどうかは、永遠にわからない。

金は買わない。でも否定もしない。ポートフォリオの5〜10%に金を入れるのは理論的に合理的だし、その判断をする人を「わかってないな」とは思いません。むしろ分散という意味では自分より賢い判断かもしれない。

ただ、自分は何かを生み出すものに賭けていたい。企業が利益を出して、経済が回って、その果実を少しだけ受け取る。その仕組みを信じているから、インデックスに入れ続ける。結局、自分みたいな人間は、可能性が高いと思えるところに静かに積み立てるしかないんです。

この記事のデータを前にして正直に感じたことは、Noteに書きました。金が6倍になるのを横で眺めていた男の本音です。

※投資は自己責任です。この記事は個人の体験談であり、投資助言ではありません。

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