iDeCoを7年やって出口戦略を1秒も考えていなかった|受け取り方で手取りが変わる話
iDeCoの出口戦略を7年間放置していた筆者が、2026年の法改正で受け取り方を調べて気づいた落とし穴。一括vs年金、10年ルール、退職金との兼ね合いなど、iDeCoの受け取り方で手取りが大きく変わるポイントをまとめました。
iDeCoを始めて7年。出口のことなんて1秒も考えてなかった。
2026年にルールが変わったのをきっかけに調べてみたら、自分の考えが想像以上に甘かったことがわかりました。
NISAの枠が足りなくて、もう一つ箱が欲しかった
2019年のことです。
当時のつみたてNISAは年間40万円。月にすると約3.3万円。投資に回せるお金はもっとあるのに、非課税の枠が足りない。もう一つ非課税の箱を増やそう。それがiDeCoを始めた動機でした。
「老後の資産形成」とか「年金の補完」みたいな立派な理由じゃないです。純粋に枠が足りなかっただけ。
SBI証券でNISAと同じところに口座を開いて、月2万円の積立を設定しました。
商品を選ぶとき、ちょっと驚いたのが選択肢の少なさです。NISAなら当たり前にあるS&P500連動のファンドが、iDeCoにはなかった。同じ米国株でダウ平均のインデックスがあったので、それにしています。
本当はS&P500が良かったけど、無いものは仕方ない。iDeCoの商品ラインナップは証券会社によって違うし、今は改善されているかもしれません。でも当時は「え、これしかないの?」という感じでした。

「あなたで3人目です」
iDeCoを始めるには会社に書類を出す必要があります。
「事業所登録申請書」とか、名前からして面倒くさい。人事に持っていったとき、ふと聞いてみました。
「他にiDeCoやってる社員っています?」
「あなたで3人目くらいですね」
数百人の社員のうち、3人。
正直、最初は「えっ、そんなに少ないの」と驚きました。年末調整で何万円も戻ってくる仕組みを、ほとんどの社員が使っていない。でもすぐに「やってよかった」に変わった。他の人がやっていないことをやっている。それだけでなんか得した気分になるタイプなんです。
今はもう少し増えているかもしれません。でも当時の「3人目」は、自分にとって小さな誇りでした。
書類の手続き自体は正直面倒でした。でも、一回やれば終わり。そこから先は毎月勝手に引き落とされて、何もしなくていい。インデックス投資と同じで、最初だけ頑張れば、あとは放置で回る仕組みです。
そしてそこから7年、本当に何もしていない。商品の入れ替えも、増額も、何もなし。手を出せないというより、手を出す必要がなかった。これがiDeCoの良いところだと思っていたんですが――出口のことは別だった。
年に一度のご褒美タイム
iDeCoで一番うれしい瞬間。年末調整です。
月2万×12ヶ月=年間24万円が全額所得控除。年収700万の場合、所得税率20%+住民税10%で年間約7.2万円の節税になります。
ずっと4〜5万円くらいだと思ってたんですが、ちゃんと計算したら7万円超えていました。住民税の軽減は翌年の天引きが減る形で戻ってくるので、気づきにくいんですよね。知らないうちに得していた。
インデックス投資って基本的に地味です。毎月勝手に引き落とされて、勝手に買い付けされて、たまにアプリで「ふーん」と残高を眺めて終わり。感情が動く瞬間がほとんどない。
だから年末調整の還付は貴重です。
年に一度だけ、「あ、ちゃんと得してた」と実感できるタイミング。自分はこれを「ご褒美タイム」と呼んでいます。インデックス投資で唯一、感情に訴えてくれる瞬間。この気持ちは大事にしています。
で、出口のこと何も考えてなかった
7年間、iDeCoについて真剣に考えたのは始めるときだけでした。
それが2026年、「10年ルール」のニュースを見て初めて出口戦略を調べてみた。
結論。自分の考えが甘かった。
iDeCoの受け取りには「退職所得控除」という仕組みがあって、一定額までは非課税で受け取れます。退職金にも同じ控除がある。問題は、この2つの控除を「フル」で使うには、受け取りのタイミングを空ける必要があること。
以前のルールでは、iDeCoを60歳で受け取って退職金を65歳でもらえば、5年空けるだけで両方の控除がフルに使えました。うまくやれば両方とも非課税。
2026年からは、10年空けないとダメになった。
60歳でiDeCoを受け取ったら、退職金の控除をフルに使うには70歳まで待つ必要がある。

なんでルールが変わったか。「5年ルールの節税テクニックが広まりすぎた」から。YouTubeやnoteで「iDeCoは60歳受取!5年空ければ税金ゼロ!」と拡散されて、国が穴を塞ぎにきた。ふるさと納税の返礼品規制と同じ構図です。
国民が賢くなりすぎると、ルールが変わる。これは覚えておいたほうがいい。今うまくいっている節税テクニックも、広まれば塞がれる。制度を使い倒すなら、出口まで含めて考えておかないとハシゴを外される。ちなみに2026年は確定申告のルールも大きく変わっています。制度変更が重なる年なので、まとめてチェックしておくのがおすすめです。
じゃあ実際いくら取られるのか
自分のケースで試算してみました。退職金の見込みは約1,000万円。うちの会社、退職金安いんですよね。iDeCoは月2万円を23年間続けると、運用益込みで約800万円の想定。
60歳で全部まとめて受け取ると、退職所得控除を超えた分に課税されて約35万円。
10年空ければ控除を2回フルに使えて、税金ゼロ。
差額35万円。
ちなみに、2027年から拠出上限が月6.2万円に上がるので増額を検討していたんですが、月6.2万にするとiDeCoの残高が2,000万円近くになる可能性がある。そうなると控除額を大幅に超えるので、どう受け取っても税金が100万円以上かかる計算になりました。入口の節税効果は大きいけど、出口の税金も膨らむ。「入口は天国、出口は地獄」とまでは言わないけど、そういう構造です。
35万円を守るために70歳まで出口を引きずるか。それともサクッと払ってスッキリするか。これはもう、性格の問題です。
合理的に正しいけど、面倒くさい
投資が好きな人にとっての「最適解」は見えています。
2027年からiDeCoの拠出上限が月6.2万円に上がるので、そこまで増額して毎年の節税額をNISAに投入。受け取りは10年後にずらす。数字の上ではこれが最も効率的。
でも。
70歳まで引きずられるのが面倒くさい。FIREしたいと思っている人間が、制度の出口のために70歳まで引っ張られるのは本末転倒です。
合理的な最適解と、感情的にスッキリする解は違うことがある。
月2万のままなら、受け取り方次第で税金ゼロにできる。増額すればトータルのリターンは上がるけど、出口が複雑になる。どっちが正解かは、その人の性格と、iDeCoに何を求めているかで変わります。
この7年間で学んだことがあるとすれば、投資で一番大事なのは「自分がどう感じるか」をちゃんと認めることかもしれません。数字が正しくても、自分が納得していなければ続かない。
iDeCoは「退職金のプラスアルファ」にした
考えた結果、iDeCoの位置づけを変えました。
「投資のツール」でも「年金の上乗せ」でもなく、退職金のプラスアルファ。
60歳で一括受取。税金は払う。そのお金は証券口座に入れるんじゃなくて、自分へのご褒美として使う。
具体的には、家族で飛鳥2に乗って世界一周。
夢だけは大きく。飛鳥2のスイートルームがいくらするかは、まだ調べていません。調べたら現実に引き戻されそうなので。

iDeCoの出口を「飛鳥2の乗船券」に変換する。そう決めたら、出口戦略のややこしさが急にどうでもよくなりました。
iDeCoは「自分へのご褒美」になりうるか
もし同僚に「iDeCoやったほうがいい?」と聞かれたら、こう答えます。
戦略的に考えるより先に、自分にとっての位置づけを決めたほうがいい。
節税のご褒美を楽しめるか。受け取るときにどうするつもりか。投資の一部なのか、退職金なのか、年金なのか。
制度としてのiDeCoは、入口は節税、出口はややこしい。でもそのややこしさも、「位置づけ」さえ決まっていれば大したことじゃなくなります。
60歳までのロックをデメリットに感じる人はiDeCoに向いていない。でも、引き出す必要がないシチュエーションを想定できるなら、節税の力は本物です。金利が上がっている今の環境で住宅ローンや家計の優先順位が変わってきている人は、こちらの記事も参考になるかもしれません。そもそもNISAもiDeCoも検討できている時点で、ギリギリの生活をしているわけじゃない。取り崩す必要に迫られるシチュエーションは、意外と少ないはずです。
iDeCoは自分へのご褒美になりうる存在か。
それを考えることが、始めるかどうかよりずっと大事だと、7年かかって気づきました。
iDeCo改正の具体的なシミュレーション(月2万と月6.2万で出口の税額がどう変わるか、NISAとの使い分け)はNoteにまとめています。数字で比較したい方はそちらもどうぞ。
※投資は自己責任です。この記事は個人の体験に基づくもので、投資助言ではありません。