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税金・制度 · 8分で読める

iDeCoの10年ルール、退職金1000万で計算したら「ずらす必要なし」だった

iDeCoの10年ルール、退職金1000万で計算したら「ずらす必要なし」だった

前回、「iDeCoの出口を一度も考えたことがなかった」という記事を書きました。

予想以上に反響がありました。みんな同じこと思ってたんだな、と。で、気づいたんです。自分、まだ計算してない。「出口を考えろ」と書いておいて、肝心の税金シミュレーションを一度もやっていない。

というわけで、やりました。自分の退職金とiDeCoで、実際に数字を出してみた記録です。

まず自分のスペックを整理する

シミュレーションの前提はこうです。

  • 年齢: 40代中盤(60歳定年まで約15年)
  • 会社の退職金: 約1,000万円(定年時の勤続29年で受け取る想定)
  • iDeCo: 2019年1月開始、月2万円、増額予定なし
  • iDeCo現在残高: 228万円(うち含み益107万円)

ちなみに退職金の「約1,000万円」は正直かなりアバウトです。うちの会社の退職金制度、説明を読んでもよくわからない。たぶん自分と同じ人、多いんじゃないかと思います。

退職金とiDeCoのシミュレーション書類

iDeCoは60歳でいくらになるか

月2万円を年利5%で残り15年間積み立てると、今の228万が膨らんで、60歳時点で約1,000万円になる計算です。

内訳としては、今の残高228万が15年の複利で約474万に。毎月2万の新規積立が15年で約535万に。合わせて約1,009万。

年利5%は楽観的かもしれないけど、過去7年で含み益が元本とほぼ同額(投資額121万に対して含み益107万)なので、非現実的でもないかなと。まあ、3%なら750万くらい。今回は1,000万で計算します。

10年ルール、実は「19年ルール」もある

2026年から変わったいわゆる「10年ルール」。iDeCoを一時金で受け取ってから退職金をもらう場合、10年あけないと退職所得控除が重複排除されるというやつです。

ここ、めちゃくちゃ大事なので書いておくと、逆パターンは10年じゃ足りません。退職金を先にもらって、その後にiDeCoを一時金で受け取る場合、19年あけないとダメ。

19年。60歳で退職金をもらって、79歳まで待つ? iDeCoの受取期限は75歳です。

詰んでます。

ネットで「iDeCo 10年ルール 対策」と検索すると、「受け取り時期をずらしましょう」という記事がたくさん出てきます。でもこれ、iDeCoを先に受け取って退職金を後にもらえる人の話なんです。会社を辞めたら退職金がセットで出てくる普通の会社員には、そもそもずらしようがない。

自分はこれを調べたとき、「え、まじか」と声が出ました。じゃあ自分みたいな普通の会社員はどうすればいいのか。答えは「同時にもらって税金を計算する」か「iDeCoを年金に切り替える」の二択です。

パターンA: 60歳で全部一括(自分の希望)

本命。退職金もiDeCoも60歳で全額一括。計算します。

退職所得控除は勤続29年で計算。800万 + 70万 × 9年 = 1,430万円。

退職金1,000万とiDeCo1,000万を同じ年に受け取る場合、控除は勤続期間の長い方(29年)がベースになります。iDeCoの22年はこの中に含まれるので、控除は1,430万。

項目金額
退職金 + iDeCo 合計2,000万円
退職所得控除(29年)1,430万円
退職所得(2,000万 − 1,430万) × 1/2 = 285万円
所得税 + 復興特別所得税約19万円
住民税約29万円
税金合計約48万円
手取り約1,952万円

48万円。

2,000万受け取って税金48万。実効税率2.4%。

Excelに数字を入れて、計算結果が出た瞬間、「え、これだけ?」と思いました。もっとドカンと取られるイメージだったんです。10年ルールの改正ニュースを読んだとき、なんとなく「数十万円じゃ済まないだろうな」と思い込んでいた。

パターンB: 退職金は一括、iDeCoは年金で15年

iDeCoは一時金と年金、どっちが得なのか。ネットで調べると「年金のほうが節税になる」という記事が出てくるので、一応こっちも計算してみました。

退職金1,000万は60歳で一括。控除1,430万の枠内なので税金ゼロ。ここは最高です。

iDeCo1,000万を15年の年金にすると、年67万円。

60〜64歳は他に年金がないので、公的年金等控除(60万円)で雑所得は年7万。基礎控除48万の中に収まるから、この5年間はほぼ非課税。

問題は65歳以降。厚生年金が始まります。自分の場合、推定で年150万くらい。

iDeCo年金67万 + 厚生年金150万 = 年217万。控除を引いて、基礎控除や社会保険料控除を引いても、課税所得が39万ほど残る。所得税と住民税で年6万。10年続いて60万。

比較パターンA(一括)パターンB(年金)
税金合計約48万円約60万円
受取完了60歳(一瞬)74歳(15年間)
確定申告不要15年間毎年必要
社保への影響なし国保・介護保険料が上がる

二つの道の分岐点

年金受取のほうが高いのか

これは意外でした。

カラクリはシンプルです。退職金が1,000万円程度だと、退職所得控除の1,430万に対して余裕がある。iDeCoを足しても合計2,000万で、課税されるのは控除後の285万のさらに半分。税率10%の世界。

でも年金受取は厚生年金と合算される。65歳以降は控除を超えた分がじわじわ課税されて、しかも国民健康保険料や介護保険料まで連動して上がる。15年間の地味な出血。

「ずらす」「年金にする」が効くのは、退職金が大きい人の話でした。

親会社の人は全然違う結論になる

以前、親会社から出向してきている人とiDeCoの話をしました。その人は退職金が手厚い。70歳以降に受け取るつもりだと言っていました。

試しに退職金3,000万円でシミュレーション。

退職金3,000万 + iDeCo1,000万 = 4,000万。控除1,430万を引いて退職所得1,285万。税金は約405万円。

同じ「同時一括」でも税金が8倍以上違う。退職金が大きい人が受け取り方を工夫するのは合理的です。

あのとき、その人が「iDeCoは70歳以降で」と言った理由がやっとわかりました。退職金3,000万ある人と1,000万の自分では、出口戦略がまるで違う。「ずらした方がいい」は万人に当てはまるアドバイスじゃなかった。

ざっくりの目安

自分の数字をベースにした感覚値ですが:

  • 退職金が控除額以下 → 一括で問題なし。ずらす手間に見合わない
  • 退職金が控除額を100万以上超える → 年金受取やタイミング調整の検討価値あり
  • 退職金が2,000万超 → 税理士に相談するレベル

退職所得控除は勤続20年を超えると年70万ずつ増えます。参考までに:

勤続年数退職所得控除額
20年800万円
25年1,150万円
30年1,500万円
35年1,850万円
38年2,060万円

自分の退職金がこの控除額を大幅に超えなければ、一括で受け取っても税金は意外と少ないです。一度並べてみるだけで、見通しがだいぶ変わります。

60歳で一区切りつけたい

計算した結果、自分は60歳で全額一括です。税金48万円。

15年かけて年金で受け取って60万円払うより、60歳で48万払って終わりにする方がいい。確定申告15年分の手間も嫌だし、何より60歳の自分にそんな器用な資金管理ができる気がしない。

この数字を見て正直に感じたことはNoteに書いています。

(ちなみにこの記事は年利5%・iDeCo残高1,000万という推計がベースです。3%なら750万で税金はもっと少なくなるし、退職金も実際の金額は変わるかもしれません。枠組みは同じなので、自分の数字を当てはめてみてください)

雲海の上に広がる穏やかな山の夕焼け

前の記事で「出口を考えてなかった」と書いて、今回やっと計算しました。

結果は、狙い通り。10年ルールが怖い、ずらさないとヤバいのかもと漠然と思っていたのが、自分の退職金規模だと大した問題じゃなかった。

計算する前の不安と、計算した後の安心。差はたった48万円分の知識でした。

振り返ると、「10年ルール」という言葉の響きにビビりすぎていた気がします。自分の退職金の規模に対して、このルールがどれくらいインパクトがあるのか。それを知るだけで、ずいぶん気が楽になりました。

iDeCoの出口、一度自分の数字で計算してみることをおすすめします。たぶん、思ってたより怖くない。

※記事中の税額はあくまで概算です。実際の金額は個人の状況により異なります。税務判断は専門家にご確認ください。

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