20代の僕は「安心」を貯金箱に詰め込んでいた
子どもの頃、うちは裕福な家庭ではなかった。だからか、お金に対する意識は早くから芽生えていたと思います。
20代の頃はめちゃくちゃ残業してた。毎月の給料が口座に積み上がっていくのを見るのが、素直に嬉しかった。「達成感」というよりは「安心感」。何かあっても大丈夫、という感覚。銀行の残高が増えるたびに、見えない盾が厚くなっていくような気がしました。
趣味がゲームと楽器だったのも大きい。ゴルフや飲み会に比べたら、ほとんどお金がかからない。特に意識して節約してたわけじゃなく、自然と貯まっていきました。今思うと、この「無理なく貯まる仕組み」は自分にとって大きなアドバンテージだった。
もし20代の自分にアドバイスするなら、「その貯金を銀行に置いておくな」と言いたい。でも当時の自分は、お金が減るリスクより、安心できる残高を維持することのほうが大事だった。その気持ちもわかるから、難しいところです。

おじいちゃんから受け継いだもの
投資に対するハードルが低かったのは、間違いなくおじいちゃんの影響です。
おじいちゃんは自分が勤めている会社の株を買って、値動きをちゃんと追っていました。「会社のことを知るには、株を買うのが一番」。おじいちゃんがそう考えていたかどうかは正確にはわからないけど、行動を見ていればなんとなく伝わってくるものがあった。
母から聞いた話があります。おじいちゃんは昔、株の代理販売のようなことをしていたらしい。株価が動くたびに心配した客から電話がかかってくる。そのたびにおじいちゃんは言ってたそうです。
「小さな値動きで動じるな」
子どもの頃はその意味なんてわからなかった。でも今、自分が投資をしていて思います。あの言葉は投資の本質をついてた。
おじいちゃんと僕は、たぶん気質が似てる。興味を持ったことには一直線で、のめり込む。株やお金に自然と興味が向いたのも、おじいちゃんの影響が根っこにあるんだと思います。毎回おじいちゃんを思い出すわけじゃないけど、根本的な考え方はしみついてる。
だから自分も自然に会社の株を買い始めました。値段が上がるのを見て「貯金より効率いいじゃん」と単純に思ってた。おじいちゃんの背中を追いかけてるつもりだったけど、おじいちゃんの「動じるな」の部分はまだ全然身についてなかった。
まさかこの後、痛い目を見るとは思ってもなかった。
ITバブル崩壊、100万円以上が消えた
2000年代初頭、ITバブルが弾けました。
若い頃の100万円以上の損失。今でも覚えてるけど、かなり凹んだ。20代の100万って、何ヶ月分もの残業代と節約の結晶みたいなもんだから。あの銀行残高を見てホッとしてた安心感が、一瞬で崩れた感じ。後に通信株で200万円の損失を出した経験にも通じるけど、大きな損失の痛みは何年経っても消えません。
「投資やめよう」と決意したわけじゃない。ただ、興味がなくなった。もっと正確に言うと、見たくなくなった。損した事実を直視するのがしんどくて、自然と投資から離れていきました。
おじいちゃんの「小さな値動きで動じるな」を知ってたはずなのに、いざ自分の身に起きると話は別でした。こういうとき、人は理屈じゃなくて感情で動くんだなと、今ならわかります。
アベノミクスで再び株の世界へ
それから何年か経って、貯金がまた貯まってきた頃。世間ではアベノミクスで株が盛り上がっていました。
「またやってみようかな」
仕事で挫折して昇給の見込みがなくなったことも、投資への意欲を後押ししました。給料だけに頼れないなら、自分で増やすしかない。切羽詰まった状況が、動く理由を与えてくれた。
でも当時はインデックス投資なんて知らなかった。値動きの激しい株を買っては、ちょっと儲かったり、けっこう損したり。利益が出てる株を早々に手放して、後から「あの株、あのまま持ってたらなぁ…」と何度思ったことか。
この手の後悔、投資やってる人なら誰でもあると思います。でも最近ようやく気づいた。どういう行動を取っても、後悔はするってこと。売っても後悔、売らなくても後悔。考えたってキリがない。
「後悔しない選択をしよう」じゃなくて、「後悔する前提で、それでも前に進む」。この考え方に切り替えてから、投資のストレスがだいぶ減りました。最終的に考えるのをやめてインデックスに任せるという結論にたどり着くまで、長い道のりでした。
20代の自分に伝えたい、たったひとつのこと
もしタイムマシンで20代の自分に会えるなら、こう伝えたい。
「株は予測するものじゃない。味方を増やすものだ」
株の値動きは、自分の考えや知識を超越した動きをする。ハッキリ言って予測なんかできない。プロでも外すのに、個人が当てようとするのは無理がある。
でも、ひとつだけ確かなことがあります。世の中のお金の価値は少しずつ下がり続ける。経営が安定している企業の株は、長い目で見ればある意味上がり続けるものだということ。
だから短期で売ったり買ったりするんじゃなくて、**「株という味方を少しずつ増やしていく」**というイメージで持ってほしい。今日買った株は、10年後の自分を助けてくれる仲間。多少の上げ下げで一喜一憂する必要はない。
具体的に何をすればいいかというと、まずは金融庁のNISA解説ページを読んでほしい。NISAは投資で得た利益に税金がかからない制度で、国が「長期の資産形成をしてほしい」という意図で用意している仕組みです。20代からこの制度を使って月1万でも積み立てていれば、40代の自分はもっと楽だったはず。
そしてインデックスファンドを選ぶ。全世界株式でも、S&P500でも、好みでいい。大事なのは、自分の予測や感情を挟まないこと。設定したら、あとは放っておく。値下がりしても解約しない。むしろ安く買えるチャンスだと思う。この「何もしない」が一番難しくて、一番大事なことです。
おじいちゃんが客に言ってた「小さな値動きで動じるな」は、まさにこういうことだったんだと思います。

遠回りしたけど、無駄じゃなかった
ITバブルで痛い思いをして、個別株で後悔を重ねて、遠回りしてようやくたどり着いた考え方です。
正直、もっと早く気づきたかった。20代からこの感覚で積み立ててたら、今頃どうなってたかなとは思います。でもまぁ、それも「後悔する前提で前に進む」の精神で受け入れてる。
大事なのは、始めるタイミングよりも、やめないこと。実際、最初の3年は退屈で増えない時期が続いたけど、その先に景色が変わる瞬間があります。
今の自分だからこそ言えること
20代の自分がこの記事を読んだら「ふーん」くらいの反応かもしれない。でも40代の自分は知っています。あの頃の100万円の痛みも、チャートを見てソワソワした日々も、全部ここに繋がってたんだって。
40代になって痛感するのは、「時間」が投資の最大の武器だったということです。20年の複利効果は計算上わかっていても、実感として腹に落ちるのは、実際に積み立てを何年か続けた後。若いうちに始めるメリットは、運用テクニックでも銘柄選定でもなく、単純に「時間が長い」こと。月1万の積み立てでも、20年続けたら元本だけで240万。長期のインデックス投資の平均的なリターンを考えれば、その先にはもっと大きな数字があります。
そしてもう一つ。失敗を恐れすぎないでほしい。僕はITバブルで100万以上失って投資から逃げた。でも、あの痛みがなかったら「自分の予測を信用しない」という今のスタイルにたどり着けなかった。もちろん失敗しないに越したことはないです。でも、たとえ失敗しても、そこから学んで方向を修正すれば、最終的には正しい場所にたどり着けます。
大事なのは市場から退場しないこと。100万円を失っても、人生が終わるわけじゃない。5年離れてもいい。でも、いつか戻ってくること。戻ってきたときに、前より賢い選択ができる自分になっていれば、それでいい。
おじいちゃんから受け継いだ「動じない」という姿勢を、僕はずいぶん遠回りして身につけました。味方は、一人ずつ増やしていけばいい。焦らなくていい。20代だろうが40代だろうが、「今日」が一番若い日なのだから。
※この記事は個人の体験に基づく情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。