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税金・制度 · 11分で読める

資産5000万の40代が「相続税は大事な税だ」と思う理由。代々貧乏な家で育った自分の結論

資産5000万の40代が「相続税は大事な税だ」と思う理由。代々貧乏な家で育った自分の結論

親から受け継ぐ資産がゼロの家で育った自分が、相続税を「払いたい」と思っています。

自分で書いてて、ちょっと変な日本語だなと思いました。普通、税金は払いたくないもの。節税の本は毎年ベストセラーだし、「払わずに済む方法」のYouTubeは伸びる。

でも、少なくとも相続税については、自分はそう思わない。

きっかけは、中山美穂さんの娘さんが相続放棄を選んだニュースでした。話題としてはそこまで長く続かなかったんですが、周りの反応を見ていて引っかかったことがあって。

「相続税って大変だよね」「払うなら放棄したほうが賢い」「日本の相続税は高すぎる」。

そういう声ばっかりだったんです。払いたくない気持ちはわかる。自分もFP2級を取っているので、制度の穴を探す楽しさはわかる。でも、代々貧乏だった家で育った側としては、ちょっと違う景色が見えるんですよね。

今日はその話をちゃんと書きます。投資系ブログで書かれることがあまりない、「相続税を肯定する側」の視点です。

家族3世代の手

10人に1人が払う税、になった

まず「相続税はお金持ちの話」という思い込みを外したいです。

国税庁の2024年統計で、相続税の課税割合は10.4%。死亡した人の10人に1人は、遺族が相続税を払っている計算になります。しかもこれ、初めて10%を超えた年。

課税割合
2014年4.4%
2019年8.3%
2024年10.4%

10年で2.4倍。何があったかというと、2015年に基礎控除が4割カットされたんです。5,000万+1,000万×法定相続人→3,000万+600万×法定相続人に。この改正で、対象世帯がガッツリ拡大しました。

自分の家族構成(妻+子1人)だと基礎控除は4,200万。都内で自宅3,500万+預金1,500万+生命保険1,000万=6,000万を超えたら相続税の対象になる。

「いやいや、6,000万って普通の家じゃないでしょ」と思う方もいるかもしれません。自分も昔はそう思ってました。でも、都内で家買ってローン払い終わったら、自宅だけで3,500万〜5,000万。あとは長年の預金と退職金と保険で、簡単に6,000万を超える。

つまり、「めちゃくちゃ裕福な家」じゃなくて「普通に働いて家買った家」が、相続税の対象に入る時代になりました。

自分が死んだら、妻と娘は相続税を払うのか

FP2級の知識を実戦投入する時が来ました。

現状の資産は5,000万円前後。内訳は自宅3,500万、金融資産1,500万。法定相続人は妻と娘1人。

項目金額
総資産5,000万
基礎控除(3,000万+600万×2人)4,200万
課税対象800万
相続税(配偶者軽減後)ほぼゼロ

今死んだとしても、ほぼゼロ。配偶者税額軽減という強力な制度があって、妻への相続分は1億6,000万円まで無税です。

でも、問題はここから。

今後も月37万の投資を続けて、60代には資産1億円に到達する可能性があります。年7%の複利で20年運用した場合の話。その時に自分が死んだら。

項目金額
総資産1億
基礎控除4,200万
課税対象5,800万
相続税(配偶者軽減後)約300万

妻と娘で合わせて約300万円。これを「払いすぎ」と感じるか、「妥当」と感じるか。

自分は、妥当だと思っています。むしろ、もう少し払ってもいい。

なぜそう思うかの話を、ここからします。

代々貧乏だった家で育った自分の視点

ここからが、個人的な話です。

自分の両親からは、相続で受け取るものはほぼゼロだと思っています。ずっと貧乏だったから。

今も支援してもらうことはなくて、むしろ自分が親に何か買ってあげる側に近いです。親孝行とかそういう大層なものじゃなくて、普通に食事代を出したり、実家のちょっとした修繕費を持ったり。相続というより、逆向きのキャッシュフロー。

これが、自分が相続税を肯定的に捉える原点です。

生まれた家で、人生の初期値が決まってしまう。親から数千万の資産を受け継ぐ子と、ゼロの子で、30代のスタート地点がまったく違う。この差は本人の努力じゃ埋まらないくらい大きい。自分は後者だったから、体感で知ってる。その記憶があるから、自分は娘には「パパはお金持ち」と言われる側に立てたのかもしれません。

20代の頃、同世代の中で「親に家の頭金を出してもらった」とか「親の援助で結婚式した」みたいな話を聞くたび、心のどこかで「うらやましい」とも「ずるい」とも違う、もっと諦めに近い何かが残りました。自分の人生には関係ない世界があるんだな、というような。

相続税は、その差を少しだけ削る仕組みです。

死んだ人の資産を少し国に戻して、公共サービスや教育に使う。生まれによる不平等を、完全には無理でも、薄める。この機能がなかったら、格差は無限に広がり続けます。

「節税しないと損」という考えに対する違和感

相続税の本や記事を読むと、ほぼ必ず「○○しないと損」という文脈で始まります。

生前贈与を使え、生命保険の非課税枠を埋めろ、タワマン節税で評価額を下げろ、教育資金贈与を活用しろ。どれも合法で、使える制度です。使うこと自体は悪くない。

でも、この「節税しないと損」という前提自体に、違和感があるんです。

払うはずだった税金を払わずに済ませることは「得」なんだろうか。その税金は社会のどこかで使われるはずだったお金で、使われなかった分は誰かが負担する。巡り巡って、格差はちょっとだけ広がる。

自分が300万円の相続税を払わずに済ませたら、娘は300万円得する。でも、社会全体で見たときに、その300万円はどこから来ているのか。答えは「他の人の税金」か「公共サービスのカット」です。

自分はこの構図が、個人的にはしっくりこない。「節税できた!」と喜ぶのは、他の誰かの負担の上に立っている自覚がない行為だと思う。

もちろんこれは個人の価値観です。節税する人を否定したいわけじゃない。ただ、代々貧乏だった家で育った側としては、「節税して娘にお金を残す」より「普通に払って社会に戻す」ほうが、なんか落ち着くんですよね。

古い家と鍵

所得税のほうが、よっぽどキツい

「相続税は高すぎる」論も、よく聞きます。

確かに最高税率は55%。ただ、これは6億円超の部分にだけかかる数字で、実際の「実効税率」はもっと低い。

総資産相続税額(妻+子2人)実効税率
7,000万112万1.6%
1億315万3.2%
1.5億748万5.0%
2億1,350万6.8%
3億2,860万9.5%

1億円の資産で実効税率3%台。毎日働いて所得税20〜30%払ってる立場からすると、「死んだ時に資産の3%だけ引かれる」って、そこまで重くない。

自分、毎年12月に源泉徴収票を受け取るたびに、けっこうな金額が税金として抜かれてるのを見て呻いてます。年収700万で、所得税だけで40〜50万、住民税も合わせたら100万近く。働いている側への課税は、結構しっかりかかってるんですよね。

働く人に重い税をかけて、亡くなった人の資産に軽い税をかける。今の制度は、働いてる人に厳しくて、もう亡くなった人(正確には資産を受け取る側)に優しい。

個人的には、このバランスは逆のほうがいい。

贈与税を下げて、相続税を上げるべき

ここが自分の意見として一番強い部分です。

今の制度、娘が資産を受け取るのは自分が死ぬときです。つまり娘は50代とか60代とか。子育てが終わって、家も買い終わって、教育費も払い終わって、一番お金が必要な時期が全部過ぎた後。

そのタイミングで数千万が手に入っても、使い道は限られる。結局、その次の世代(孫)に持ち越されるだけ。お金が動かない。

逆に、娘が20代や30代で親から支援を受けられたら。子育て、住宅購入、起業、留学。お金が「経済を動かすところ」に流れる。消費も投資も生まれる。少子化対策にもなる。

だから自分の提案はこう。

贈与税を今より下げて、若い世代に早くお金を渡せるようにする。相続税を今より上げて、使われずに塩漬けになる資産を減らす。

こうすることで、お金が世代をまたいで動きやすくなるし、格差の固定化も防げる。

ただし今の政府は逆方向に動いてます。相続税は2015年に基礎控除4割カットで対象拡大、贈与税は2024年に生前贈与の持ち戻し期間を3年→7年に延長。両方とも「使いにくく」なっている。どっちも増税方向。自分の意見とは真逆。

なぜこうなっているか。たぶん「世代間の資産移転を抑制する」が財務省のロジックなんだと思います。でも、結果として若い世代にお金が回らない構造が残っている。少子化対策と税制が噛み合っていない。

娘には何を残したいか

じゃあ自分は娘に何をする予定か。

まず、生前贈与は今はしません。娘は8歳で、大きなお金が必要になるのはまだ先。今から年110万ずつ渡しても、使い道がない。

ジュニアNISAの後継となる新しい子ども向けの投資口座制度が検討されているので、それが始まったら使うつもりです。教育も兼ねて。「お金が勝手に増える感覚」を早く体で知ってもらうため。運用益の多寡より、投資というものに慣れることが目的。こどもNISAをお年玉で始める計画は別記事にまとめています。

大きな動きは、娘のライフイベントに合わせて。

家を買うときは、住宅取得資金の贈与特例を使って支援する。子どもができたときは、教育費の都度贈与で支援する(教育費の直接支払いは非課税)。子育て期間中も、必要に応じて生活支援を入れる。

目的は「娘が子どもを作れる・育てられる環境」を作ること。節税のための贈与じゃなく、世代の再生産のための贈与。この違いは、自分の中では結構大きいです。

日本の少子化を個人レベルで解決することはできない。でも、自分の娘が子育てで潰されないようにはしたい。

都市と地方の対比

相続税に悲観的にならなくていい

最後に、これが書きたかった話です。

相続税のニュースを見ると、「払いたくない」「節税したい」の声ばかり聞こえてきます。わかります。払いたくないのは当然。

でも、代々貧乏だった家で育った人ほど、この税を肯定したほうがいい。この税がなかったら、資産を持ってる家はどんどん増やし、持ってない家はずっと持ってないまま。世代を超えて格差が固定化する。そうなった社会で一番損をするのは、スタート地点に立っている自分たちの子どもや孫の世代、特にゼロから始める側です。

自分が資産5,000万まで来られたのは、時代(低金利でインデックス投資が機能した)と、運と、共働きの環境のおかげです。両親からの相続じゃない。一定の教育を受けられる社会インフラがあって、そのベースがあったから働けた。このインフラを支えているのが、所得税、消費税、そして相続税。

だから娘にも、「相続で救われる」んじゃなくて「自分で作れる環境」を残したい。そのためには、社会全体で格差が広がりすぎないことが大事です。

相続税は、その一部を支えている税です。自分の死後に300万円払うことで、社会の基盤が少しでも公平に保たれるなら、それは払う価値がある。

節税テクニックだけが語られる空気に、ちょっと別の視点を足したかった。ただそれだけです。

相続税について感じたこと、世間の反応へのモヤモヤはNoteに書きました。数字では言い切れない部分です。

※この記事は個人の見解と試算に基づくもので、税務・投資の助言ではありません。具体的な相続対策は税理士や専門家にご相談ください。

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